インテルが進めるSOA戦略
CPUが何か関係するのか???と思って読んでみたら、社内システムのSOA化ですね。。。
ただし、非常に興味深い内容だったので、全文コピペで。
「一つの機能を提供するアプリケーションは社内で一つだけ」
「ERPと現状のビジネス・プロセスが異なる場合、できるだけ現状のプロセスを変更する」
ユーザー部門から大規模な新規開発や機能の追加・修正の申請があった場合、「システム部門の専門組織で可否を判断する」
非常にシンプルだが、これを実践できる組織はなかなか無い。ガバナンスを利かせる体制が整っているのだろう。(スキル、組織)
やはり一般企業で無いと無理なのか?
意地でも考え出してみよう。11月からのアクションと合致する。
================
米インテルが6年がかりで全社の基幹系システムの見直しを進めている。SOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づき、変化に追従可能なシステムの実現を狙う。売上高4兆円、システム部員約5500人を抱える同社だが、実はデータやアプリケーションが各業務でバラバラという日本企業と同じ悩みを抱えていた。
世界最大の半導体メーカー、米インテル。2007年12月期の売上高は383億米ドル(約4兆円)。売上高は前年比108%と微増だったが、営業利益は同145%の82億ドル(約8600億円)に上る。粗利益率55%強を保つIT業界屈指の高収益企業だ。
社内システム向けの投資規模もケタ違いだ。世界117拠点にデータセンターを持ち、全世界で約5500人のシステム部員を抱える同社の年間IT予算は約 10億ドル(約1050億円)。日本企業の平均年間IT投資額(経済産業省調べで7億2500万円)のほぼ150倍の規模だ。
インテルは今、09年の完了を目標に全世界の社内システムを見直している最中だ。SOA(サービス指向アーキテクチャ)の考え方を取り入れ、「業務の変化に追従できる柔軟なシステムに転換する」とインテルのシステム部門でチーフアーキテクトを務めるグレッグ・ワイアント氏は話す。
インテルがSOAへの取り組みを開始したのは03年。6年がかりの長期プロジェクトである。背景には、取引先の変更やリードタイムの短縮など「ビジネスは日々変化するのに、その変化にシステムが追いつけない」(同)という、多くの日本企業と共通する悩みがあった。
わずかな機能変更さえ不可能
インテルの従来システムがビジネスの変化に追従できなかったのは、現状の個別業務を優先してシステムを導入した結果、「ちょっとした機能変更さえ難しい」(ワイアント氏)状態に陥っていたからだ。
同社の基幹系システムの中核を成すのはERP(統合基幹業務システム)パッケージである。1996年から順次、独SAPのERPパッケージ「R/3」を導入した。ほかにSAP以外のパッケージや独自開発のシステムを利用している。
ところが会計、SCM(サプライチェ ーン・マネジメント)など業務ごとに順次導入したため、複数のR/3のバージョンが混在していた。「顧客」や「取引先」といったマスターデータも個々のシステムで異なっていた。
しかも業務に合わせることを優先させ、ERPパッケージに数多くの改変を施していた。アドオン(追加開発)は10万個所以上、好ましくないといわれる、ソースコードを変更するモディフィケ ーションも数千個所以上ある。これでは小さな機能変更さえ困難だ。
半導体業界のトップ企業とはいえ、ビジネスの変化に追随するのは容易ではない。社内システムをこのまま放置できない。インテルは社内システムを全面的に見直す決定を下した。2003年のことだ。
まず手がけたのは現状の“見える化”である。全世界の社内システムとその関係をすべて図式化した。次にあるべきシステム像を描き、図式化したシステムの現状と比べて差異を分析。3年間検討した結果、あるべきシステム像をSOAの考え方を取り入れて実現するのが有効と判断した。
アプリケーションとデータを集約
SOAに基づくシステムの実現に向け、インテルが06年に開始した取り組みは大きく2種類ある。
一つはアプリケーションのシンプル化に向けた取り組みだ。社内に重複して存在するアプリケーションやマスターデータを見直し、「一つの機能を提供するアプリケーションは社内で一つだけ」とルールを決めた。
SOAに基づくシステムでは、アプリケーションの機能を「サービス」の単位で組み合わせて利用する。同じ機能が複数存在したままでは、SOAのメリットを生かしづらい。このため準備段階として、アプリケーションのシンプル化が必要だった。とはいえ、既存のシステム資産を捨てて全体を作り直すのは非現実的だ。
そこでインテルは以下の手段を採った。SOAに基づくシステムを実現できるERPパッケージの最新版を社内標準とし、既存のパッケージを最新版にバージョンアップする。その際にアプリケーションやマスターデータの重複を洗い出し、一つに統合する。またERPパッケージのアドオンやモディフィケーションを最小限に抑えるため、「ERPと現状のビジネス・プロセスが異なる場合、できるだけ現状のプロセスを変更する」(ワイアント氏)ことを徹底。この方針で「会計」や「受発注」など事業部門ごとや国別に構築していたアプリケーションを集約していった。
集約の対象にしたアプリケーションは、総勘定元帳やSCM、受注管理など10以上にのぼる。大規模な集約では「総勘定元帳」を完了。総勘定元帳を含む会計システムはSAP製品の最新版「SAP ERP 6.0」を使って構築、07年に稼働した。現在はサプライヤや顧客企業を管理するSCMの集約を進めている最中だ。
マスターデータの統合では、ユーザー部門とシステム部門が協議して「顧客」や「サプライヤ」など、頻繁に利用する32種類のデータを第一弾として特定。これらをアプリケーションから共通利用するため、SAPのマスターデータ管理ソフトを導入した。マスターデータの統合プロジェクトは09年以降も継続する計画である。
利用部門と共同でサービスを定義
インテルがアプリケーションのシンプル化とともに06年から取り組んでいるのは、SOA環境の整備の推進だ。
その一つが社内システムにかかわるルールの策定。アプリケーションのシンプル化を維持し、SOAの効果を最大化するのが目的だ。
中でも重要なルールは、サービスの決め方に関するもの。インテルはサービスを「システム開発の際に再利用可能なもの」と位置づけている。「受発注」や「顧客情報の登録」といった業務を支援する機能だけでなく、マスターデータなども含まれる。
インテルのルールでは、サービスを決めるにあたり「システム部門とユーザー部門の合意が必要」とする。ユーザー部門の中で全社のビジネスプロセスを理解している担当者と、システム部門で全社のアプリケーションやデータ構造を理解している担当者が話し合い、複数の部門で頻繁に利用すると判断した機能やデータをサービス化する手順だ。
ユーザー部門から大規模な新規開発や機能の追加・修正の申請があった場合、「システム部門の専門組織で可否を判断する」というのもルールの一つだ。専門組織は、ベンダーが提示した製品のロードマップと、申請があった機能を照らし合わせるなどして判断を下す。「機能強化の予定があれば、一時的と限定してソースコードの改変などを許可する場合もある」(ワイアント氏)。
社内ルールはSOAに関するものに限らない。「社内システムにかかわる業務プロセスをすべて、社内ルールによる統治(ガバナンス)の下で運営している」とワイアント氏は話す。
並行して、SOAに基づくシステムの実現に欠かせないミドルウエアの整備も進めている。サービスの連携を制御するESB(エンタープライズ・サービス・バス)、定義したサービスを一元管理するためのリポジトリ、サービスを組み合わせて実現するビジネスプロセスを作成するBPM(ビジネスプロセス・マネジメント)ソフトなどを順次導入している。
特にワイアント氏が「導入効果が大きい」と期待をかけるのはBPMソフトだ。「ユーザー部門と話し合いながらビジネスプロセスを作成すれば、その場でプロトタイプを作れるので要件定義も手早くできる」とメリットを話す。BPMソフトとしてSAPの「SAP NetWeaver Composition Environment(CE)」を採用する。
システム部門内に説得チームを設置
SOAに基づくシステム刷新を推進するのが、システム部門内の二つの組織だ。一つはワイアント氏が所属する「ストラテジ、アーキテクチャ&イノベーション(以下、ストラテジ部門)」。もう一つが「コアシステム・エンジニアリング(以下、コア部門)」である。どちらも「SCM」や「顧客」などアプリケーションの機能別に分かれたチームと協調して活動する。
ストラテジ部門は主にシステム戦略を立案する。ビジネスプロセスの変化に応じたシステム戦略を考えるだけでなく、SOAの技術動向を調査し適用方法を考える役割も果たす。
一方のコア部門は、ストラテジ部門が立案した戦略を実行する。ERPパッケージのアップグレードやシステムの統廃合などのプロジェクトを主導するほか、システム部門やユーザー部門の教育も担当する。
「R/3のエンジニアに新しいSOAの考え方を教育するのは非常に重要」と、コア部門 SAPシステム・エンジニアリングでシニア・インテグレーション・アーキテクトを務めるジェラルド・シーマン氏は強調する。システム部門の担当者が古い考え方のままでは、システムを刷新しても利点を生かせないからだ。すでにシステム部門の技術者約600人への教育を終えた。
ユーザー部門向けでは教育のほかに「説得」も重要な役割となる。「ユーザー部門は当然、自部門のシステムにこだわる。廃止するとなればビジネスプロセスも変わるため反発が大きい」(シーマン氏)ためだ。反発するユーザー部門には「当社内の問題を共有し、なぜこうした対策が必要なのかを説明することが効果的だ」(同)という。
インテルは両部門の人数を公表していない。ワイアント氏は「ERPパッケ ージを利用して、SOAに基づくシステムの構築に関与しているのは550人程度」と話す。
累積で2億ドルの削減効果
インテルがシステムの見直しに着手してから約5年、SOAに基づくシステム刷新に着手してから約2年が経過した。「すでにいくつか効果がみえてきた」とワイアント氏は話す。
中でも大きいのは、サービスやデータの再利用による削減効果だ。定義済みのマスターデータを利用した場合、システムの構築期間は平均約40%短期化している。マスターデータに加え、サービスを再利用した場合は約60%短縮できるという。
インテルは定義したサービスやマスターデータの再利用を促進するために、再利用によって節約できた開発期間や工数を金額に換算し、社内ポータルで公開している。同社によれば、効果を積算すると07年度までに約2億ドル(約210億円)以上の削減効果があった。
ワイアント氏は「当社のような巨大な企業にとって、SOAに基づいたシステムの構築や、その考え方を定着させるのは容易ではない」と強調する。それでも効果が出ているのは「トップの理解があり、トップダウンのプロジェクトとして全社的に推進しているからだ」とワイアント氏は分析する。